今回のツアーは、三河の国で味噌の香りに誘われ、尾張の国で戦国の気配に触れ、そして伊勢で黄金の光に包まれる、
まるで”時代の扉を渡り歩く”ような旅でした。
◆岡崎【八丁味噌カクキュー】 ~家康公のふるさとで、時を発酵させる蔵へ~
旅の始まりは、徳川家康公が産声を上げた町、岡崎。
この地に400年近く根を張る八丁味噌カクキューへ足を運びました。
かつて”政府御用達”として日本の食卓を支えたこの味噌蔵は、まさに三河武士の精神そのものを発酵させてきた場所です。

連続テレビ小説のロケ地となった蔵や資料館の見学では、古い木の桶の香りと発酵された甘い気配に鼻先をくすぐられ、
最後はみそ汁の試飲で冷える身体を温めました。
「どうでしょうか、舌の肥えた皆様は感じていただけると思いますが、一口含めば舌の上で歴史がほどけていくそんな味がしますよね。」
笑いを取りつつ、カクキューをあとにしたバス車内でしたが、
実は私自身が愛知県出身であるため、懐かしの味に誰よりも感動していた、というのはここだけの秘密にしておきましょう。
◆犬山城と城下町 ~信長・秀吉・家康、天下人たちが奪い合った名城へ~
バスは続いて三河の国から尾張の国へ。
木曽川を背にし堂々とそびえる犬山城は、現存十二天守の中でも、国宝に選び抜かれた五つの城のひとつです。
さらにその中でも最も古く、織田信長の父にあたる織田康成が建てたこの城は、激動の時代の流れの中でその主を幾度と変え、名声と最盛を築いてきました。

階段と呼ぶには急すぎる、誰もが息を切らして登った先の天守からの景色は圧巻でした。
一望できる城下町や木曽川の流れから、乱世を駆け抜けた武将たちの姿に想いを馳せて・・・
・・・私にはそんな崇高な感性はありませんでしたが、それでも大河ドラマの映像が浮かび上がるほどでした。


城から城下町へと繰り出すと、華やかな賑わいが出迎えてくれます。
軒先から伸びる呼び込みの声に誘われ歩を進めると、
バスの車内で事前に力説した名古屋飯の店先に、心なしか長めの列が・・・
”旅は味から記憶になる” ーーそんな瞬間がこの犬山の地でもあればいいなと、少し誇らしげな気持ちでした。
◆長島【なばなの里】 ~信長と秀吉の戦った地で黄金の光に包まれて~
旅の締めくくりは、かつて織田信長と豊臣秀吉が一向一揆と激しく刃を交えた場所である三重県長島。
戦国の影を残す土地に足を踏み入れながら、その先に広がるのはまばゆい光の楽園でした。
今年のテーマは”黄金の国ジパング”。
かつて世界の人々を魅了した”金色の日本”へのあこがれを体現したイルミネーションの数々はとても神秘的でした。

点灯の瞬間から展望台からのマジックアワー(夜景が最も綺麗に見える日没からの15分間)の夜景、
さらにはライトアップされて湖面に映る紅葉までを心ゆくまで堪能でき、
まるで人々を夢と現実の境目へとそっと連れていくようでした。


◆おわりに
今回のツアーはまさに日本の歴史と文化が一本の糸のようにつながっていく旅でした。
参加された皆様にも、今回の旅が黄金の光となって温かく刻まれていれば幸いです。
また拠り所となるような旅でご一緒できることを心から楽しみにしています。
添乗員 安井




